喜び

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「はい。お待たせ。」 ラーメンと餃子がテーブルに並べられた。 そういえば注文していなかった。 楓がいつも食べていた物なのだろう。 ラーメンは醤油で 昔ながらというワードがぴったりだ。 この手のモノは食べた事が無い。 餃子は小ぶりで中華料理店で出てくるものより 焼き色が強めで 皮が薄くニンニクの香りがする。 「いただきます。」と言って 楓は 皿にコショウを山ほど振り入れ 酢を足すと 餃子を掴んで それにつけ パクリと頬張り にっこりと笑顔になった。 唖然とする。 酸っぱくないのか。 それにそのコショウの量。。 意味がわからない。 俺が戸惑い 皿を凝視していると 楓は急いで首を振り 「あ。高嶺さんは普通に食べて下さい。。 俺 この食べ方ここで教わって。 餃子はこうやって食べるんです。。。」 別皿を俺の前に起き 醤油と酢とラー油を並べる。 俺は何度も言うが もともと飯に興味がなく かつ 食べる事に 冒険をする事もない。 食べ方を変える気もないし 得体の知れない物を口にする事など 生まれてこの方した事がない。 だがこんなに旨そうに食われると やってみたい気持ちが持ち上がる。 それに俺にはわからないと言われた気がして 面白くない。 コショウを取り 楓が入れていたくらい 皿に振り入れ 酢を入れる。 既に口の中が酸っぱくなる気がするが 構わず 餃子を一つ箸で掴んだ。 「高嶺さん。。無理しなくても。。」 心配する楓の声を聞きながら それに餃子を浸し 恐る恐る口に入れた。 ・・旨い。 コショウの辛さと酢の酸味が混ざり合うと 互いのいい所だけが強調され 餃子の旨味がさらに広がり さっぱりと食べられる。 そのままあっという間に 皿の餃子を全て食べ尽くし 楓はそれをぽかんと口を開けながら 黙って見守って 空になった皿に視線を落とすと クスクスと笑いだした。
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