怒り

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景と元が廊下に立ち尽くしていると 矢野が走ってこちらに駆けつけた。 「・・・た・・高嶺さんは。。」 矢野は顔面蒼白で息を切らせ 俺の顔を見るなりそう聞いてきた。 俺は手術室を指さし 「今 手術中だ。 刺されたときにすぐ高嶺が携帯の緊急ボタンを 押してたからうちの関連の病院から すぐに救急車を出して運ばれて。。」 元が一歩足を踏み出し難しい顔をしたまま 矢野の肩を両手で抑え 「大丈夫です。向きが逸れたので 致命傷じゃないって医者が言ってますから。」 と言う。 矢野は小刻みに震えながらコクンと頷くが 貧血を起こしているかのように顔が白い。 今にも倒れそうな矢野を元が 急いで長椅子に座らせる。 一体誰が。 何故高嶺を。 俺はさっきからずっと考えていた。 元が狙われるなら分かる。 コイツは次期三代目として 疎ましく思われる対象で 実際に命を狙われたことは何度もある。 だが高嶺は影の存在で その行動自体は知っている人間しか 把握していない筈だった。 矢野がつけられていると言っていたが もしかして高嶺が。。 だがその想像は元が首を振って否定する。 「もしそうだったら高嶺も俺も 気づかない筈がない。」 なら何で高嶺が刺されたのだ。 「打ち合わせで使うカフェと駐車場を 把握していた奴がいる筈だ。」 元は苦々しくそう言った。 俺もそうだが使う所は大体限定される。 でも それを知っているとなると。。 「ってことは組とかじゃなく 高嶺個人を狙ったって事になるぞ。。」 俺の言葉に元は重々しく頷く。 「そうです。誰かが高嶺を殺そうと狙ってる。」 元の言葉に矢野はぞくっと背筋を凍らせ ぶるぶると震え始めた。 隣に座り矢野の肩を抱く。 小さい肩は震え続け 拳を色が変わるまで握り込み 手術中のライトをじっと見つめていた。
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