温もり

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矢野は顔面蒼白になり しばらくプルプルと震えながら じっと下を向いて黙っていたが 急にキッと顔を上げ 俺の目の前のコップをぐーっと飲み干した。 ああっ それ酒っ !と 景が焦り声を出し 止めようとするが 既に矢野は一気に飲みきってしまっている。 すると矢野の全身はぶわっと赤くなり 途端に目がずんっと座ってくる。 ふらふらと立ち上がり 普段見たこともないくらいの暗い目で ぎっと睨みつけ 「うるさいんだよ!!」と 大声を出して俺を指差した。 横で景のあちゃーっと言う声が聞こえる。 なんだ。何が起こった。 「・・いつも・い・つも バカにしやがって。 ・・俺だってなあ!・・俺だって 助けられるんだったら・・助けたかったよ! ・・で・でも・・でも俺は・・ バカだから・・バカだからなんにも出来ない。 ・・俺はこれしか・・これしか。。」 拳を握りしめ 真っ赤な全身は更に赤くなる。 みるみるその大きな瞳に涙が溜まり ポロポロと零し始めた。 「俺はこれしか出来ないんだ!!」 そう叫ぶと 急にふっと黙り 全員が呆気にとられ見つめる中 うーーーん。。と言って 俺を指差したまま 矢野はその場にドーーンとぶっ倒れた。 あーあ。。 景の虚しい一言が 静まり返る 宴会の席に 響き渡った。
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