離さない

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助かった安堵感が去り 次に楓を襲ったのは負の感情だった。 身の置き場のない後悔に苦しめられ 振り回され 弱っていく。 妹の死を経て 楓は刑事になった。 理解してやれなかった自分をバカだと思い それでも 前を向いて 一人でも 薬で死ぬ人を無くしたいと その一心で突き進んでいたのに。 妹が死んだのは自分のせいだと知り 楓は立ち直れないくらいのショックを受けていた。 たくさんの被害者が出た。 助けるどころか死なせてしまった。 そう言って 楓は呆然とし それから全く笑わなくなった。 葛西は まだ 楓を苦しめるのか。 許せない。 やはりあの時もう一発殴っておけばよかった。 自分の手で抹殺してやればよかった。 だがそんな事をしても 今の楓の苦悩が無くなるわけではない。 俺は楓を助けたい。 なんとしてでも いつもの楓を取り戻したかった。 数週間が立ち 痛みも取れ 俺も楓も仕事に復帰したが 楓はまだ立ち直れていなかった。 復帰してからはしばらく内勤を 坂田に命じられ 夕方にはマンションに 戻っていたが 俺が帰るとベッドの中で蹲っている 日々が続いていた。 その日もそうだった。 俺がベッドルームへ行くと 食欲も無く 睡眠も充分に取れていない 楓は 小さく蹲っている。 「楓。」 声をかけると 少し顔を上げこちらを見る。 その顔は青白く 無理矢理笑みを作るのが痛々しい。 小さい声で すいません。。と謝る楓が 余計に可哀想になる。 だが。 これじゃ駄目だ。 時には荒療治が必要だ。 よし。 俺は楓に近づき 布団を剥いで抱きかかえる。 え。。え。。と驚く楓を そのまま リビングに連れて行き ソファーにトンっと座らせた。
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