story 2 ~ プロローグ

2/6
5940人が本棚に入れています
本棚に追加
/802ページ
この世の中にいい男などいない。 顔も良くて金も持っていてセンスがいいなんて テレビドラマか漫画の世界だ。 目の前の男は及第点。 顔は十人並みで連れて歩くのに 恥ずかしくないレベル。 金は持っていて このブランド物のバックも時計も アクセサリーもコイツが全部買ってくれた。 身体はフツー 夜の方もフツー でもしょうがない。 だって全部揃った奴なんてこの世の中には いないんだもの。 どっか我慢が出来れば 楽しい毎日が過ごせる。 飽きたらまた次に行けばいい。 そう思っていたのに。 自分の男を見る目線の先のあの男はどうだ。 カウンターでグラスを傾けるこの男は 稀に見るイケメンで体格が良く 高級スーツに身を包み 煙草を燻らせる姿が 色気を纏い あの広い胸板に 顔を埋めてみたくなる。 時間を見る腕にはロレックスのデイトナ 嫌味なく高い物を身につける様が とっても魅力的な男だった。 目の前でつまらない話を 延々としている男を放ったらかして 席を立ち その男の隣に座る。 男はすっと目線を寄越すが すぐ前を向く。 胸の谷間を強調するように肩を寄せ 自前の煙草を細い指に挟み じっとその男を見ながら反応を待つ。 しばらく時間が経過したのち その男はふっと息を吐き シュボッと火をつけてくれた ライターはギャッツビー。 煙草をかざし 火をつけると パチンとライターが閉じられ 男はまた目線を前に向ける。 あたしを絶対に意識している。 こんな理想的な男 見たことがない。 チャンスだわ。 絶対に落としてみせる。 身体を男に寄せ 誘って。と意思表示する。 が、男はピクリとも動かない。
/802ページ

最初のコメントを投稿しよう!