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その瞬間 男はこちらを振り返り
ふっと笑顔になった。
さっきまでのクールな表情とは違い
少し幼さが見えるその顔つきに
胸がドキンと反応する。
ああ。素敵。
髪をかきあげ 薄いグレーのサングラスの奥に
切れ長の瞳が見える。
その鋭い瞳に全身を隈なく見つめられたい。
この人なら本命にしてもいい。
このレベルの男にはそう簡単には出会えない。
今 逃すと一生後悔するだろう。
やっぱり照れてただけなのか。
あたしの魅力に気づかない男などいない。
最大級の威力を持つ 笑顔を返そうと
表情筋を緩めると
目の前の男は すっと止まり木を降り
あたしの後ろに声をかけた。
「楓。」
え。。?
楓?
パタパタと足音が聞こえ
ハッと後ろを見ると男が
息を切らせながら走りこんでくる。
安物のスーツを着たチビだ。
「・・た・・高嶺さん。すいません。
遅れちゃいました。。」
そのチビがすまなそうにぺこぺこ頭を下げた。
高嶺。
それがこの男の名前なのか。
そう呼ばれた男はニッコリ微笑み
「大丈夫です。」
とそのチビの肩を抱き
すっと あたしの横に座らせ
自分はひとつ奥にずれて座った。
あからさまに間を取って入れられた。
なっ。。
なんなの一体。。
シカトされた上に この態度。
プライドが粉々に砕け散っていく。
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