story 2 ~ プロローグ

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隣に座ったチビは戸惑いながらあたしを見た。 大きな綺麗な瞳がキラキラと輝き 少しうるうると潤んでいる。 口元に小さなほくろがあり 童顔なのに どこか色っぽさを感じた。 このタイプが好きな人には きっと堪らないだろう。 真っ直ぐな性格なのか その目線はしっかりと前を向き なんだろう。とただ素直に疑問をぶつけてくる。 男で可愛いとか 気に入らない。 何も言わずにギロッと睨むと チビはビクッと首をすくめ オロオロと 隣の男に助けを求めるように 上目遣いで顔を見上げている。 なんなの。アンタ天然系か。 その子犬のような仕草も確かに可愛く 上等テクニックを何の策略も無くやる コイツにまた更にイラッとし 怒りを込めて睨みつけると ブルっとチビは身を震わせた。 さっきまで隣にいたこの男は あたしの存在を完全に無視して チビに 向かってかぶりを振ると 「気にしないで。楓。何飲みますか?」と囁く。 その声がとても甘い。 低く甘く子宮に響き 声までセクシーなのかと悔しくなる。 ああ。この男の声をもっと聞きたい。 名前を呼ばれるだけできっとイク。 想像するだけで身悶えそうになる。 この二人はなんなんだ。 いわゆるそういう事ってやつ? 信じられない。 こんな理想的な男がこんなチビと。 なんでよりによってこんなヤツと。 でも 二人を包む雰囲気は 誰も何も寄せつけない。 二人だけの世界。ってやつ。 そんなもの経験した事もない。 それが余計に腹立たしい。 ふんっと椅子を降り その場を逃げるように後にする。 もうなんの興味もないカスが 「ま・・待ってよ・・。」と縋るような声を出す。 この世の中にいい男などいない。 いても 自分の手には入らない。 何故なら。 あたしがそうじゃないからだ。 あたしは違う。 名前が愛のくせに 人を愛してこなかった。 そう。きっと。 あのチビのように 真っ白な奴にしか手に入らない。 あの瞳を見ればわかる。 純粋に素直に真っ直ぐ人を愛する瞳。 本当は。 世の中は そう出来ているのだ。
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