寄り添う

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なんだ。 ちょっと胸がドキっとした。 この笑顔見たさに必死にやっているような 気にさせられる。 とりあえず訳のわからない思考は横に置いた。 コイツと一緒にいると 自分で理解出来ないことばかりに直面する。 いちいち考えていたら神経が持たない。 向かい合わせの席に座り タバコを出して いいですか?と聞く。 コクンと頷いたので火をつけ煙を燻らせた。 矢野はサンドウィッチを一つ齧りながら 「・・珍しいですね。」と言う。 え。。?と聞くと 「仕事中は吸わないんだと思ってました。」 と言った。 そういう事は気づくのに何で他はわからないのか。 やっぱりコイツは意味不明だ。 「ありがとうございます。すごい腹減ってて。 寒かったし助かりました。 これでまたもうちょっと頑張れます。」 ほら。わかっていない。 コイツは俺が見るに見かねて飯を与え 風呂に入れてくれたのだと思っている。 食ったらまたあそこに戻る気だ。 はぁ。と思わずため息が出る。 周りを見回し 広い部屋ですね。 高嶺さんいつもこんな綺麗なホテル 使ってるんですか?などと 無邪気に聞いてくる矢野にちょっとキツめに 「矢野さん。」と声をかけると ビクッと固まり 食べかけのサンドウィッチを ポトンと皿に落とした。 小動物のような動きに 思わず苦笑し 「怒ってませんから。」と 落ちたサンドウィッチを拾って手渡す。 するとまたくしゅんっとクシャミをした。 寒いのかと途端に心配になる。 着ていたジャケットを羽織らせると デカイなぁ。ありがとうございます。と また少し微笑んだ。 おどおどしない矢野はほんわかとした 空気を醸し出す。 それは意外と居心地が良く またかなり戸惑った。
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