寄り添う

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子供は好きにしていい。 その言葉は長年胸の底に溜まっていた 罪悪感をすっと解く。 本当にわからない。 なんなんだこの人は。。 今まで見た事も会った事もないタイプだ。 何も答えない俺が怒ったと思ったのか 矢野はまた慌てだし すいません。。わかってもないのに 偉そうなこと言っちゃって。 嫌ですよね。 知りもしないくせに 勝手な事を。。 ホントすいません。 どうしよう。。こんなに色々して貰ったのに。。 すいません。。すいません。。 あたふたと身振り手振りで繰り広げられる 矢野の独り舞台に今度は笑いが込み上げてくる。 ダメだ。 俺は身を折ってついにゲラゲラと笑い出した。 止まらない。意味がわからない。 こんなに腹の底から笑った事はない。 おかしい。なんなんだ一体。 俺が笑い転げている姿にまたびっくりし 目を白黒させていた矢野は だんだん釣られてきたのか 一緒に笑い出した。 その笑顔がまた俺の気持ちを暖かくする。 こうやって人はわかり合っていくのか。 わからないと切り捨てていたら 気づかなかっただろう。 一通り笑い終わると 俺は矢野を見つめた。 こんなに楽しそうなのだ。 あの暗い部屋に戻したくない。 「ここ。広すぎて嫌ですか。」 不安を見越してそう聞くと 情けない顔になった矢野は 俺は一般的な庶民なんで。。と呟く。 なんだその理由は。 また笑いそうになる。 するとまたくしゅんっとクシャミをした。 やっぱり風邪を引いたかもしれない。 「熱出ると困りますから俺もここに泊まります。 その代わりベッド一個ですよ。 キングサイズだから広いですけど。いいですか?」 矢野は全く躊躇せず コクコクと頷き ありがとうございます。 とはにかんだ笑顔を俺に見せた。
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