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水が欲しい。
でも立つ力が無い。
このまま干上がってしまうかもしれない。
喉の奥からうめき声しか出ず
俺は身動き一つできずにただ寝っ転がっていた。
ああ。情けない。
薬も持たず 水も飲めず状態は悪化するだけだろう。
救急車を呼ぶか。。
だが携帯がどこにあるのかもわからなかった。
ヤバイな。。このままだと。。
これ以上休む訳にはいかない。
仁のもとを離れる訳にはいかない。
体調管理も出来ないなど。
あり得ない。
馬鹿か。俺は。
自分の不甲斐なさにやり切れなくなり
諦めて目を瞑った。
楓。
心の中で必死に呼びかける。
聞こえるはずがない 遠くにいる恋人を想い
名前を呼び続ける。
待っていてくれるだろうか。
あとどれくらいかかるかわからない。
楓が危険な目にあっても 助けてやる事も出来ない。
泣いていても抱きしめてやる事も出来ない。
それでも 俺を。
待っていてくれるだろうか。
「・・楓。」
無意識に口から名前がこぼれ落ちた時
そっと背中に手が入り
上半身をゆっくり起こされる。
からからの唇にグラスがつけられ
そっと水が流し込まれた。
ああ。旨い。
生き返る。
渇いた喉がだんだん潤い
熱い身体の中を冷たい水が通っていく。
シャツが脱がされ
タオルが首の周りや背中 胸の汗を拭く。
力が一切入らず されるがまま
誰だろうと目を凝らすが
視界が熱に浮かされ ぼやけよく見えない。
だがそれでもこれが誰かわかっている。
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