寄り添う

7/13
5970人が本棚に入れています
本棚に追加
/802ページ
目を覚ましたら 俺は高嶺の腕の中にいた。 かなり疲れていたのか泥のように眠った気がする。 途中かなりの寒気を覚え 意識の遠くで身体が震えているのが わかったが 大きな手に引き寄せられて 安全地帯にすっぽり包まれた気になった。 そこは経験した事がないくらい 暖かく 冷え切った俺を温め 留美が死んでから 毎日何度も夜中に 目が醒めるのに 久しぶりに朝まで熟睡した。 すーっと規則正しい寝息を吐く 高嶺は 疲れたような顔をしている。 きっと俺に悪い事をしたと思って 色々調べてくれたんだろうな。 悪いのは俺なのに。。 この人は本当はとても優しい。 口から出す言葉は皮肉に満ち ナイフの様に俺を突き刺す事もあるが 基本言われてもしょうがない。 俺が高嶺を苛々とさせているのだから。 でも。 昨日は本当に優しかった。 見たことがない笑い顔が見れて とても嬉しくなり 釣られて笑ってしまったし。。 哀しみが映る瞳でお父さんの話をした時 この人はたくさん傷ついていると思った。 なのに俺を心配してくれる。 いいなあ。 この人に愛される人は幸せだ。 こんなにカッコよくて 頭が良くて優しいのだ。 ヤクザだが仕事も出来ると聞いているし 彼女ももちろんいるだろう。 結婚したらきっといい父親になるに決まってる。 俺は愛を知らない。 親の愛情も気がつけばどこかへ行ってしまい 他の誰かに愛されたこともない。 そんなことを考えたらなんかチクンと 胸が痛くなった。 まだ風邪が抜けきってないのかな。。 と 考えていると大きな手がすっと伸び 俺のおでこにそっとあてられた。 高嶺は薄く目を開け 熱大丈夫そうですね。と微笑んだ。 途端に心臓がドキドキと音を立てる。 怒られたわけじゃないのに。。
/802ページ

最初のコメントを投稿しよう!