寄り添う

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高嶺は上半身を起こし スルッとベッドを出てバスルームに向かった。 俺は着替えようとキョロキョロ 周りを見回すが スーツがどこにも無い。 どうしよう。。と途方に暮れていると ピンポンとドアベルが鳴った。 高嶺はバスルームからすっと出てきて ドアへ向かう。 後ろから覗き込むと ボーイから何かを受け取ってこちらに 戻ってきた。 俺のスーツとカッパだった。 クリーニングに出してくれたらしい。 すごいなぁ。 俺は全然そんなことまで気が回らない。 戻ってきた高嶺は不思議そうに 何かを持ち じっと見ている。 未開封のカイロだった。 高嶺がこの間わざわざ届けてくれたものだ。 スーツのポケットに入れたままだった 事を思い出す。 「使わなかったんですか?」と聞かれ 「なんかもったいなくて。。」と 答えると また苦笑いを口元に浮かべ はい。と俺に手渡した。 使えなかった。 嬉しかったのだ。 バカな俺がボーッと突っ立っているだけの 場所にわざわざ来てくれて渡してくれた。 昨日も雨の中 来てくれて 風呂にお茶にご飯も食べさせてくれ 震える俺を心配しあっためてくれた。 三つも年下なのに。 子供を世話するように甲斐甲斐しく。 俺は何も返せない。 いつも貰ってばっかだ。 じっとカイロを手に持ち 立ち尽くしていると 高嶺はポンポンと俺の頭を叩き 用意して行きますよ。と 優しい笑顔を向けてくれた。
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