寄り添う

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「・・ああ。そっちもか・・」 景はカウンターの中で携帯から聞こえてくる 坂田の説明を聞きながら 目の前の異様な光景へと目を向けた。 もう1週間だ。 元も隣で困り果てたような顔をしている。 たまに声をかけても 何の返答もなく 多分その耳には何も届いていない。 高嶺が死んだようにカウンターの椅子に座り 固まって動かない。 いつもは辺りに気を配り 俺が電話していれば 何かあったのではないかとすぐに 聞き耳をたてるのに 今はたぶん電話している事も 気づいていない。 元によれば仕事は普通らしい。 相変わらず抜け目なくしっかりと スケジュールを把握し 元が困らないようにサポートする。 すでに契約も一つ固め また組に大きな収益を齎した。 事務所での態度も変わらない。 舎弟も誰一人その異変に気付いていない。 それが仕事が片付くとすぐに黙り込む。 元が無理矢理ここに引っ張ってきても いつもの一歩下がってじっと状況を観察している 冷静な高嶺はどこにもいない。 カウンターに座り込み 誰の言葉も耳に入らず ただずっとこうやって固まっている。 声をかけても返事が無いのだから 何を考えているのかも正直わからない。 まぁ。。矢野の事なんだろうけど。。 先日の祝いの席で矢野を傷つけた責任を感じた 高嶺は 矢野が追っている事件の手伝いがしたいと 元に申し入れ 独自で情報を探し回って ヤクを捌いている政友会の人間を突き止めた。 良かったな・・と思ってたのだが。 どうも何かあったな。。 この様子では怒っているわけじゃなさそうだし。 どちらかといえば  何かを後悔しているように見える。 はーーーっとため息をつく。 この二人は本当にうまくいかない。 やっぱり分かり合えるわけがないのかな。 考え方があまりにも違いすぎる。 俺が余計な事言ったからかな。。。 俺にとっては大事な二人だし 二人ともいい奴だ。 ちゃんと気持ちが通じれば いい関係性を築ける なんて勝手に思ってしまったのだが。。。 とはいえこのままでは元も俺も困る。 少し揺さぶってみるか・・・と 坂田との通話を切った。
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