寄り添う

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「なんかさー 矢野がすごい凹んで 全く使い物にならないんだって」 急に俺の耳に景の言葉が飛び込んできた。 横で元が へぇ。。どうしたんでしょうね。 大丈夫かな。と言っている。 「坂田も困り果てててさ。 何聞いても答えないらしいし。 高嶺が見つけてくれた政友会の奴も 動きがないらしくて もう1週間無駄足踏んでるんだって。」 景の言葉が俺にズサッと刺さってくる。 「いつもものすごく粘り強くて たかだか1週間ぐらいじゃ何も言わないのにさ。 珍しくダメかもしれないって弱音吐いてるって 坂田が心配そうに言ってた。 しつこく問い質すと こうやっている間に 人が死んでしまうかも・・って 口にしたみたいで。」 俺が矢野に投げつけた言葉だ。 本気でそんな風に思わせてしまったのか。。 あの日 カフェへ矢野を連れていき 店を訪れた斎藤を指さし 被害者が参加していたパーティーの主催者だと 教えると 矢野は目を丸くしてびっくりしていた。 その後 矢野が張っていたグループは 今は政友会の対象になっていない事を告げると 途端にその様子がおかしくなった。 ああ。。多分俺はそれを言うべきではなかった。 お前は三週間もただ突っ立っていただけだと 証拠を揃えて目の前に突き付けたようなものだ。 矢野を貶めようとした訳ではない。 バカだな。そんな無駄な時間を過ごして。と 言いたかった訳でもない。 もちろん利口なやり方だとは今でも思っていない。 矢野のやり方は俺には理解が出来ない。 それは変わらない。 だがその行動に伴う矢野の想いを知り 出来ることをやろうとしているのだと それだけはしっかりと理解したつもりだった。 だから普通に調べた事をそのまま報告した。 それが矢野をまた傷つけたのか。 俺はなんでわからないのだろう。 少し通じ合った気がした。 同じ時間を過ごし少しずつ矢野の事が わかってきている気になっていた。
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