story 1 ~ 序章

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「で。何があったんですか。」 俺の問いかけに謝罪の言葉を止め ああ。と手帳を取り出した。 「高嶺さんに言われた通りでした。 さっき 一人男が病院に忍び込んできて。。 坂田先輩を殺そうとしたのだと思います。」 この人は報告になるとしっかりとした 受け答えになる。 「坂田さんは。」 「はい。事前に部屋を移しておきました。 高嶺さんから伺って 何かあったらいけないと思って。 名札をそのままにしておいたので 犯人は気付かず 前の部屋に。」 良かった。 よく元といがみ合うが坂田はマル暴でも 話がわかる刑事で 柏木組の組長である 辰雄とも繋がりがある。 犯人の情報を報告しようとする 矢野を遮り 頭に浮かんだ疑問をぶつける。 「よく忍び込んできたのがわかりましたね。」 部屋を移したのなら 犯人が忍び込んでも気づかないのではないか。 すると矢野はちゅうちゅうと アイスティーのストローを吸い 「見張ってたので。」と言う。 「誰がですか。」 「俺です。」 「どこで。部屋の中ですか?」 「いえ。俺は鉢合わせしたら絶対 負けちゃうんで。。」と 情けなさそうに眉毛を下げる。 そりゃそうだろう。 「じゃあ。。」 「部屋の向かいのボイラー室です。 ちょっとだけ扉を開けてたので 相手には気づかれませんでした。」 どういう事だ。 まさかとは思うが。。 「・・いつからですか。」 俺のキツくなる口調に少しビクッとしながら 「坂田先輩が意識を取り戻されて 高嶺さんと話した後 部屋を移してからです。。」 ざっと一週間だ。 また呆れて口が開くのが自分で分かる。
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