story 1 ~ 序章

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最近別行動が多かったが 今日は朝から元と共に新しい契約に向けて 打合せに赴き その帰りに景の喫茶店に寄った。 俺たちは極道だが普段は一般企業のソレと あまり変わらない。資金集めは合法に限る。 綱渡りなど絶対に長くは続かないからだ。 景は警察を辞めた後 すぐに喫茶店を始め 警察時代に知り合った情報屋で飲食業の経験がある ケンを雇い入れ 探偵業と兼業している。 景が入れてくれたグァテマラの甘酸っぱい香りが 俺の尖った神経を緩め小さく欠伸が出る。 「なんだ。昨日はお愉しみか。」 元の揶揄うような声音に思わず顔をしかめた。 それはお前だろう。 景を目の端で確認すると  襟で隠してはいるがその首筋に  薄く赤い印が見える。 元はよく所有の跡を残したがる。 全く独占欲の強い男だ。 俺があのチンチクリンに振り回されている間に コイツは思う存分景を堪能したのであろう。 仲がいいに越したことはない。 この二人が揉めると俺の仕事は増える。 元は嫉妬深く  それに巻き込まれて大変な思いをした事は 一度や二度じゃない。 この間だってそうだ。 もう思い出したくもない。 とはいえ 今の俺は若干荒んでいる。 あんな何を考えているのかわからない奴に 一晩付き合わされたのだ。 それもアイツは景の後輩ときてる。 ほわほわと甘い雰囲気に包まれている二人に 多少意地悪をするぐらい  今の俺はきっと許される。 「景さん。この間力弥と二人で買い物に 行ったと聞きましたが 何を買ったんですか。」 力弥は俺たちの兄弟分で景の幼馴染だ。 元は昔からこの力弥を目の敵にしていて 景が力弥を頼ると途端にいやーーな顔になる。 えっ。。 いやいやいや。。 と景は焦りだし  元はみるみる機嫌が悪くなった。 「景。聞いてない。」 だからそれは。ほらこの間の。。 俺一人じゃわかんないから  付いてきてもらっただけで。。 と必死に言い訳をする景に 元はふるふると首を振り  「ちゃんと話すって約束したでしょ。」 と完全に膨れ上がる。 今までの甘い雰囲気はどこかへいき あっという間に揉め始める二人の会話を聞きながら 俺はゆっくりコーヒーを飲む。 香りもいいが口当たりも爽やかで  少し気持ちがスッキリした。
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