もしもの話

「……羨ましいな」

　私は呟き、再度視線を上げた。

　岩山にいるサルたちは、冷たい風をしのぐように数匹のグループで寄り添っている。いわゆるサル団子だ。その中には家族らしき、親ザルと子ザルの姿もあった。

　当たり前に寄り添える、揺るぎない関係。

　その光景が、私にはひどく眩しく映る。

　約束された愛情。この動物園には何匹の生き物がいるのか――そのどれもが、当たり前のように互いを想い合いながら生きている。

　なのに、私は……。

　ぼんやりと考えながら檻に寄りかかっていると、ふと将吾が私の横に立った。

「羨ましいって、サルが？」

「うん。なんだか仲良さげじゃん。……もしもさー、次生まれ変わるなら私、おサルさんになろうかな」

「やだな、俺はあんな毛むくじゃら。俺なら、せっかくだから今度は地球の生き物じゃない何かに生まれ変わりたいかな」

　その言葉に、つい顔をしかめる。

「やっぱ、やめた。サルじゃなくて私は、また山倉千砂になって将吾と付き合うもん」