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「山本」
会社に着くと、同僚の小山が少し不機嫌な顔をしながら近づいてきた。
「おはよう」
「あの後、二人で何処に行ったんだよ。須川に聞いても教えてくれないし」
「ランチしただけだよ」
「何だよ。ランチだけかよ」
「どうして?」
「別に何でもないよ」
そう言うと、小山は売り場に戻って行った。
私が働いている会社は、東京の中心にある結構有名な書店。
働きだして、今年で3年目になる。
小山は同期。
そして、須川さんは今年の春に移動してきたばかりで、3階の洋書担当。
で、私と小山は2階のコミック担当。
始めは、小山と意見の食い違いでよく喧嘩していたけど、最近は良い同僚って感じになっている。
「山本さん、おはよう」
須川さんがいつものスマイルで、手を振りながら近づいてきた。
「おはようござ…」
私もにっこりと笑顔で返そうとした瞬間、耳元で須川さんが呟いた。
「今日も可愛いね」
ちっ、近い。
私は驚いて後ずさろうとして、足が絡まって転びそうになった。
「あっ」
その瞬間、素早く須川さんは私の手を取ってくれたから、転けることは免れたけど、何故か抱きしめられていた。
「ごめんなさい。ありがとうございます」
私は慌てて須川さんから離れると、その場から走って逃げた。
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