第1章

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携帯の時間が10時になったと同時に、 「山本さん」 と何人かの声が聞こえてきて、私は振り返った。 会社の同僚達の中に須川さんがいた。 「こんにちは」 私は須川さんの前に行き、にっこり笑顔で挨拶をした。 須川さんもいつもの笑顔で返してくれた。 (きゃ~、この笑顔が最高なのよ) 「じゃ、みんな揃ったことだし、そろそろ行くか」 同僚の小山が大きな声で仕切りだした。 「え?」 私は心の声がおもいっきり出てしまった。 (二人でデートじゃないの?何、この展開。いらない) 「小山、違うだろ」 須川さんが小山の頭を軽く叩いた。 「いいじゃん。一緒に行こうぜ」 小山は甘えた声でそう言うと、須川さんの腕に手を絡ませた。 須川さんはその手を振り払って、 「嫌だ。僕の邪魔をするな」 少し怒り口調で言って私の手をとった。 (えっ) 「走るよ」 須川さんはにっこり笑ってそう言うと、おもいっきり走りだした。
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