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お腹が音を立てた。
僕は弁当を鞄から出し、友達の所まで行く。途中で好きな子に「放課後ちょっといい?」という誘いをもちろん聞き逃さずに。
空いている席を勝手に借り、机に弁当を広げる。
友達と喋りながら食べる弁当は、ボッチの頃よりも格別美味しくて、勉強つづきの午前の癒しに少しでもなれた。今ではもう、それが当たり前になっているけれど。
お腹を満たしたあと、すぐ5時間目が体育だった。
あいにく、陸上。50分間も走りっぱなしだ。おかげで6時間目の古典で眠たいの限界を越して、夢の世界に行ってたら先生に強引に連れ戻された。
そんなこんなでもう帰りのSHR。
僕ら一斉に席に着き、先生の話を聞く頃にはもう、頭の中は部活で占めていた。
礼のあと、勢いで部活に向かいそうになった僕をあの子の手招きが止めた。僕はやっと思い出す。
──放課後ちょっといい?──
そうだった。
僕はとりあえず、あの子が向かう方へついて行くことにした。だんだん廊下の奥へと進んでいく。
あの子が急に立ち止まったのは、階段の横の凹んだ空間。僕の方に振り返って口を開く。
「あのね、ちょっとだけ言いたいことがあるの」
そう切り出した彼女は少し照れているようにも見えた。少し緊張しているようにも見えた。
「実は……その──」
僕は何かを感じ、無意識的に身構える。
「その、あの、実、はさ、その……」
彼女は不自然な深呼吸をした。
「好きです! だから、その、だから、付き合ってください!」
もしも身構えていなかったら僕はどうなってしまっていたのだろうか?
今度は僕が緊張する。とてつもなく鼓動が早くなっている。
「あ、あ、ありが、とう……実はさ、僕も、好き、でした。だから付き合ってください」
一気に言ってしまったので息が荒くなっている。
僕らの青はこういうスタートだった。
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