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白い床に、所々に観葉植物が飾られている。建物の中心は吹き抜けになっていて、ショッピングモールのような作りだ。
すると、まるでこれから嵐が起こるかのような生ぬるい風が吹き抜ける。
中にいる人間の殆どは高校の制服のような衣類を着用している事からわかるように、ここは学校だ。その中の一人の男子生徒を数人の生徒が取り囲んでいると、その男は不敵な笑みを浮かべた。
男はおもむろにかがんで、手のひらを白い床にそっと置いて呟いた。
「抑えていた『常闇の能力』を解放する」
その男がそう言うと巨大な魔法陣が床に出現する。魔法陣の中心に穴が空き、そこから現れたのは紛れもない『悪魔』だった。
全長3メートル程で背中には翼が、頭には禍々しいツノが生えている。血のような真っ赤な瞳で周囲を睨みつけている。
『悪魔』は威嚇するかのように吠えた。
「グァァァァ!!!!」
吹き抜けになっている広いフロアに、不気味な咆哮を聞きつけた生徒が集まりだして、人だかりが出来ている。中心にはこの悪魔を召喚した男と、へたり込んでその男を見上げている怯えた男だ。
「ち、ちょっと待ってくれ……俺をこ、殺したらお前は刑務所行きだぞ! ――」
この状況でも、怯えた男は命乞いをしなかった。それは勇気ある行動なのか……それとも愚かな行動なのか。
「交渉のつもりか? 貴様は状況を理解出来ていないようだな……これから死ぬ貴様には、俺の事はどうでもいい事だろう? それよりも少しは自分の心配をしたらどうだ?」
その男は不敵に笑い、怯える男を殺そうとする。その時ひとりの美少女が叫んだ。
「ダメだよ! エディ。私は大丈夫だから……そんな事はしないでお願い!」
しかし『エディ』と呼ばれた『その男』は、彼女の制止に耳を貸さずに『怯えた男』に魔法の詠唱を始めた。
辺りがドーム状の光に包まれ、周囲で激しい放電現象が始まった。『怯えた男の』顔はみるみるうちに恐怖の色に染まる。そしてその状況を見て、集まっていた生徒は避難を始めていた。
『その男』が突き出した掌から魔方陣が重なり大きく展開し始めた。
「やめろ……やめてくれぇぇぇ!!」
辺りは真っ白い光に覆われた。
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