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――時は少し遡る――
風が頬を優しく撫でていく、高校の授業も終わり自宅に帰る途中の穏やかな陽射しは、まるで複雑に絡まった心を解いていくようだ。辺りは桜の花弁が雪のように舞っている。
アスファルトに敷き詰められた、桜の花弁の絨毯を踏みしめながら、鷹咲一矢は空を見上げた。
反吐がでる程に平和だ……。
平和が悪いという訳では全くない、むしろ素晴らしい事だ。大衆の多くは平和を望むものだからだ。
しかし生まれながらにして、平和を享受している事に疑問を感じる。自分で手に入れたものではないからだ。
人は苦労して手に入れたものの方が大切に出来るはずだ。
だから自分で手で入れたいと願っているのだ。
しかし、現代における血みどろの戦争をしたいという危険な思想を持っている訳ではない。
求めるのはそう……。
ファンタジーなのだ!
突如現れた魔王が世界征服を目論み、街の外では凶暴なモンスターが暴れまわり、モンスター討伐のクエストをギルドから受注して金を稼ぎながら魔王を倒す旅に出る。
旅の途中で出会った、ロリ巨乳の妹属性魔法使いや、悶絶セクシーお姉さん属性ヒーラーや、ちっぱい幼馴染属性エルフの狩人を仲間にし、船を手に入れて世界中の……船酔いするから船はやめとこう。
それから危険なダンジョンの探索して、伝説の剣を手に入れ、魔王を倒し富と名声を手に入れるハーレム大冒険。
そんな世界を夢見て、毎日ゲームをプレイしてはファンタジー系アニメを観ている。しかしやはりそれだけでは物足りず、秘密のノートに自分で考えた魔法やスキルのアイデアを書き込み、魔法を撃つ練習を日々重ねている。
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