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小指、といえばもう一つ。
つばさが赤ん坊の頃だ。それが夢だったのか現実だったのかは定かではない。
灯りがわずかにともる暗い部屋だった。
自分をのぞき込む、歳は十二歳になるつばさよりも幼い女の子。
七歳の七五三で着たような紅い着物を着ている。
マッテイル。ヤクソク。
直接頭に語りかけてきたのか、ただそう思ったのか。
寂しそうな顔で、小指を差し出された。
その意味が分からなく、赤ん坊の小さな手は小指をきゅっと握りしめる。
二人だけの秘密の指きり。
――誰と指切りしたんだろう。
時折思い出す夢の出来事は誰にも言わなかった。なぜか母にもだ。
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