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『桔梗はじきに目を覚ます。お前が下手くそで未熟な呪いのせいで昏睡状態になったからな』
なんでこの黒犬は母の名前を知っているのだろう。
あの秘密の告白をした時、つばさは無意識のうちに望んでしまった。
――この真実が誰にもバレませんように。
そんな自分の我儘で母を窮地に追いやってしまったのだ。
『朱いのが呪いを解くためにお前の父兄は対価を支払った。だがお前はなにもせず、ただ自分の不正を黙り、のうのうと生きていくのか』
胸がえぐられるほど痛感する。
なんでそんなにひどいことをいうのだ。
つばさとて、どうしていいのかわからない。
この家の、家族ではないと知ってしまった以上、居場所も自分の存在も不安定になる。
「じゃあ、どうすればいいの」
闇のモノに耳を傾けてはいけない。
心を開いてはいけない。
けれど、つばさには縋るものが何もない。
にやり、と黒犬は嗤ったのかもしれない。
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