『三女』

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  「ねぇ、昔話をしてもいい?」  隣にいる朱葉がいった。  柊護は朱葉の家に来た日から同じ布団で寝ている。  初日は羞恥のあまり遠慮していたのだが、いかんせんこの家は狭すぎるのだ。  部屋は客間と朱葉が過ごす寝室だけ。最低限の台所と浴室、手洗い。  洗面所がないため、顔を洗うにも歯磨きするにも不便でしかたない。  客間は調度品が多く布団を敷く場所がない。  廊下で寝ようにも導線の妨げになると布団を敷くこともできない。ベッドの下で寝ようにも狭いのだ。 「いい加減あきらめなさいよ」  と朱葉の言葉にようやく難癖をつける柊護は折れたのだった。  いそいそと遠慮がちに入る布団は、驚くほど寝心地が良く、ものの数秒で意識が飛んでしまうほどだった。  心配していた不埒な思惑も悟られないようでよかった。 「むかしむかしあるところに、三人のカミサマがいました」  正確には神様の数え方は『柱』なのだが、寝物語に水を差すのも野暮だろう。  
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