127人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねぇ、昔話をしてもいい?」
隣にいる朱葉がいった。
柊護は朱葉の家に来た日から同じ布団で寝ている。
初日は羞恥のあまり遠慮していたのだが、いかんせんこの家は狭すぎるのだ。
部屋は客間と朱葉が過ごす寝室だけ。最低限の台所と浴室、手洗い。
洗面所がないため、顔を洗うにも歯磨きするにも不便でしかたない。
客間は調度品が多く布団を敷く場所がない。
廊下で寝ようにも導線の妨げになると布団を敷くこともできない。ベッドの下で寝ようにも狭いのだ。
「いい加減あきらめなさいよ」
と朱葉の言葉にようやく難癖をつける柊護は折れたのだった。
いそいそと遠慮がちに入る布団は、驚くほど寝心地が良く、ものの数秒で意識が飛んでしまうほどだった。
心配していた不埒な思惑も悟られないようでよかった。
「むかしむかしあるところに、三人のカミサマがいました」
正確には神様の数え方は『柱』なのだが、寝物語に水を差すのも野暮だろう。
最初のコメントを投稿しよう!