『三女』

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  「二番目の姉は先を読む力がありました。占いを得意とし、人と人との縁を結ぶことを生業としていました」 「ふむ」 「最後の末妹はまだ幼児でしたが、異能を使った姉たちの疲れを癒してくれました。それはまるで身体にある澱を取り除いてくれたかのよう。――けれどそれは浄化したのではなく、自分のうちに取り込んだだけだったのです」 「それだと三番目の娘さんは損な役回りじゃないですか」 「それでも、幼いながらに姉達の役に立ちたかったのよ。まぁそのせいで病弱ではあったわね」 「それで?」 「平和な日常は突如として崩壊します。三姉妹の異能を我が物としたい盗賊が村を襲撃しました。人里離れた村でしたが、私利私欲のため盗賊を招いた内通者がいたのです」 「…………」 「抵抗した村人はことごとく殺されていきました。頭にきた盗賊は火矢を放ち、村は火の海になりました。命からがら逃げだした長女は三女を(かか)え、森を駆け抜けますが、運悪く足を滑らせ崖の下に落ちてしまいます。  
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