『三女』

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   一瞬気を失った長女は無傷だったのが奇跡だと思いましたが、すぐに理解しました。  落ちたら怪我では済まない高さです。そして自分の腕の中で冷たくなっている三女に涙しました。  三女がすべて、姉の怪我も命も身代わりになってくれたのです」 「そんな……」 「――昔話よ。ところで学校の七不思議ってあるじゃない」 「いきなりなんですか?」 「内容の精査は別として、七つ話を知ると不幸が訪れるみたいな。ちなみに今の昔話を最後まで聞くと」 「聞くと?」 「眠れなくなる」 「いや、気になって眠れませんよ!」  すっかり目が覚めてしまった。  朱葉の身体は未だに冷めたままだ。 「白湯でも飲みますか?」 「いいわよ。夜中手洗いに行きたくなっちゃうじゃない。あんた起こしちゃうでしょ」  手洗いに行くにも柊護の手助けが必要だから朱葉は遠慮した。 「かまいませんよ。よく妹に夜中起こされてますから」 「あんたの一部にはいつも妹がいるのね」  
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