第四音 夏芽

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第四音 夏芽

「…私ね、昔から体が弱くって、学校にも行けずにねお家でずっと閉じこもっている生活だったの。ある日、雨の日に窓の外を見たら、クロがいてねすごく寒そうに震えて倒れちゃったの。お母さんやお医者さんには雨の日なんてもってのほか、外には極力出るなって言われてたんだけどね。そのときは知らない猫だったけどクロをどうしても助けたくなってついうっかり必死になって外に出て助けちゃったの。もちろん、びしょびしょになって風邪をひいてしまったわ。普通の人なら風邪ぐらい平気なのだけれど私は違った。その風が悪化したせいで病院に入院したの。友達なんているわけないからお見舞いは来ないと思ってたんだけど、あの時助けた猫、クロがね、毎日お見舞いに来てくれたの。それがその時の私にはその時間が一番の幸せだったわ。でもある日大きな波が来て、三日ぐらい生死をさまよったの。そして、もう駄目だと思ってね「もう一度だけ、できればあの子とおしゃべりがしてみたい」なんてバカみたいなこと考えたら、「チリリーン…」って鈴の音がしてね意識が遠のいてったの。最初は死んだと思ったわ。でもね気が付くと、病気が治ってて、君たち猫さんとしゃべれるようになってたんだよ。…不思議でしょ?」 と、首を傾げニコリと微笑む。 「鈴の音…」 その夏芽が言った鈴の音は、自分が聞いた鈴の音とそっくりだった。鈴の音。それが、不思議な現象を呼び起こしてでもいるのだろうか。現に、二人もその不思議にあっている人間がここにいるのだ。 「君、まるで人間みたいな名前だね?聞いたとき少し不思議に思ったんだ」 そう言ってきた夏芽に対し僕は、 「僕も―。」 と、ここまでの経緯を話した。彼女ならば、こんなバカげたは無しでも少しは信じてくれそうな気がしたのだ。話を聞き終えた夏芽は、少し考えてから 「不思議だね…。ナツメ君もそそ鈴の音を聞いたんだ」 そういう。僕は 「うん…」 といい、また考え始める。それを見て夏芽が、 「でも、その鈴の音が私たちを引き合わせてくれたんでしょ?なら、悪いものではなさそうだけどな~」 なんて、微笑みながら言ってきた。それを聞いた僕は赤くなっているかはわからないけれど、そんな感じがしてしまうぐらい恥ずかしくなってしまった。 しばらくの沈黙を裂くようにクロが出てきて、 「おい早くしろ、他の奴らも待ってる」と、少しいら浮いているような感じで言ってきた。
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