第5音 仲間

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第5音 仲間

「ごめんごめん!」 夏芽は、少しイラついているクロをなだめるように抱きかかえて曲がり屋へ入っていった。それに続いて僕も、曲がり屋へと足を踏み入れる。 「(…いいにおい)」 木の香りが今までの苦しみを優しく払うかのように僕の体へ纏わりついてくる。戸を抜けると長い廊下。その一番奥にある部屋から夏芽の声がした。てくてくと吸い込まれるようにその部屋へと体が勝手に歩み進んでいく。その部屋は今まで自分が欲しかったものが全てあるような、そんな感じがしたのかもしれない。 「さぁ、改めてよろしくね!ナツメ君」 部屋に入ると、クロを膝の上に載せてベッドに座っている夏芽が僕に向かってニコリと微笑みそう言ってきた。部屋には、クロと、知らない猫が二匹。一匹は雪のように白くナツメの横で丸くなっている。もう一匹はこげ茶色で、ベッドの下でこちらをじーっと見ている。 「私の膝の上にいるのが、知っての通りクロ。私の一番のお友達だよ」 そう、夏芽がみんなを紹介していく。 「次は、私の隣にいるのがピケちゃん。可愛いでしょ?」 そういうと、ピケが顔をあげ僕をちらっと見る。だが、そっけなくまた顔をうずめて丸くなる。 「(…冷たい…)」 だが、その視線は今まで僕が受けてきた視線とは、また少し違った気がした。 「次に、このベッドの下にいるのが…」 そこまで夏芽が言うと、ベッドの下からいきなりその猫が出てきて 「わしはマル。この中で一番男気のある猫や」 そう、胸を張るようにして言う。マルは、この中で一番大きな猫で、名前の通り少し丸いような体だ。 「あはは…。最後に、私がこの猫の家の主。猫さんとお話しできちゃう白河夏芽です!」 そう、夏芽がにっこりと笑いながら言う。すると、次にクロが 「お前も自己紹介しろよ?」 と、言ってくる。自己紹介なんて全然したことない。何を話せばいいのか…
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