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それからのことは断片的にしか思い出せない。
上下する身体。
はるの唇で塞がれた唇から漏れる私の嗚咽。
頬をグシャグシャに濡らしながら、苦しそうな表情をするはるに心で“いつまで続くの?”と何度も問いかけた。
何度“やめて”と叫んだだろう。
押し退けようと何度も試みたが、がっしりした身体にダメージはなく、逆に私の身体が弱っていくだけ。
どれくらい経過してからだろう。
はるが「なつき、好きだ」と告白した後、私の上からようやく動かなくなった。
“終わった”という知りたくもなかった悲しい安堵を胸に感じた。
だが、一刻も早くはるから離れたい。
今にでも倒れてしまいそうな身体に精一杯力を入れ、はるを押し退け、バッグとショーツを取るとゆりの家を出た。
座るととても痛いため、自転車を立ちこぎしながら家に逃げ帰ってすぐ、浴室に駆け込み冷水でシャワーを浴びた。
その際、太ももをつたった鮮やかな赤い血を目に入れた瞬間、ショックでその場に座り込んで、泣いた。
ーーどうして、と。
そして、私は汚れてしまったのだと強く感じた。
ゆりが尋ねてきたのは、たぶん正午過ぎだったと思う。
何度か着信があったものの、私は出られないでいた。
何も言わずに帰宅した私を心配していたのはわかっていたけれど、誰にも会いたくなかった。
「なつき、いないの?」というゆりの声が扉越しにしたけれど、私は毛布を身体に巻つかせて、ベッドの上に体育座りをしていた。
もし、この時ゆりに助けを求められていたなら、変わっていただろうか。
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