囚われのプロポーズ

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ゆりに偏頭痛がひどくなって薬を取りに帰りそのまま寝ていたと嘘を吐いたのは、その翌日。 昨日、今日とサークルに顔を出さなかった私を心配し、ゆりからもらった電話で説明した私だったが「宗ちゃんもはるも心配してたよ」と、はるの名を出したため、寒気がした。 「そ、そうなんだ、ごめん……」 そう言った私の声はひどく震えていたが、電話越しだったため、ゆりまで届かなかったよう。 「いやいや、頭痛かったの、大変だったね。なつき偏頭痛出るとひどいもんね」 「うん……。でももう大丈夫。今からバイトにも行けそうだし」 「そっか、よかった。無理しないでね」 「うん」 「じゃあまた皆で飲もうね」 誘われて普段なら“うん”と即答できるけれど、少し遅れて「う、うん」と答えた。 今日もずっと閉じこもっていたかったけれど、現実そういうわけにはいかない。 家賃と学費は親からの仕送りに助けられ甘えているが、生活費やお小遣いは自分で稼がなければならない。 父親はサラリーマン、母親は家具屋でパート勤務というごく普通の家庭なので、負担はかけられない。 そのうえ姉は結婚して家を出ているが、私立の高校に通う弟だっているのだ。
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