囚われのプロポーズ

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4階建てのマンションのオートロックもエレベーターも付いていないむき出しの階段をのぼっていると、スマホがメッセージを受信した。 ゆりに予定でも入ったのだろうか、とすぐに取り出し確認すると“宗太郎も来てもいい?”と来ていた。 彼、増島宗太郎(ますじまそうたろう)は同じ歳のゆりのいとこであり、サークル仲間だ。 中性的な顔立ちでおっとりした性格であることから、女子とすぐに仲良くなってしまう宗ちゃんとは、私も一年の頃から仲良くさせてもらっていた。 宗ちゃんは頭がいいのでレポート作成にはかかせない存在。 “もちろん、いいよ”と返したのは、自分の部屋に入ってから。 玄関の入り口につけたエスニック調の紐のれんをくぐり、丸型の和モダンなペンダントライトを付けてすぐ、私は「あっつ」と扇風機の風量ボタンの強を押した。 狭い部屋は蒸し風呂のようで、熱気は私の身体を溶かし食べてしまいそうだ。 それでもアジアンテイストを意識した部屋は狭いが、結構気に入っている。 首を風で仰ぎつつ、黄色の電球を少し見つめていること数分、お泊まりの準備を始める。 といっても、ゆりの家に私の服は2着ほど置かせてもらっているうえ、メイク道具もお泊まりの際は借りるので、持っていくものは下着とレポート、それから普段はコンタクトなので眼鏡くらいだ。 ゆりの家に向かったのはちょうど17時頃だった。
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