囚われのプロポーズ

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「宗太郎に会わなかった?」 「いや、会ってない」 「そっか、つい今お酒買いに行ったのよね」 「まじ?俺も持ってきたけど」 そう言ってはるはコンビニの袋をドンと床に置いた。 その衝撃で酎ハイが転がり出る。 「なんか甘いものばっか」 袋を覗いたゆりが眉をしかめる。 「そう?ビールもあるよ、ほら」 はるがビールを見せると、ゆりが「もーらい」と素早くとった。 はるは苦笑すると私に「なつきはこっち」と期間限定であるスイカ味の酎ハイを渡した。 「ありがとう、これ気になってたんだよね」 期間限定のものは一通り試したいタイプの私は喜ぶ。 「なつき好きそうだなって感じがした」 「鋭い」 「だろう?」 はるは口の端を上げ得意気に笑った。 はるも宗ちゃんほどではないが気が回る。 痩せ型の宗ちゃんと違い、男らしい体型の彼は、体型と反したれ目がちで優しい顔立ち。 だが親しい人にしか笑顔を見せないので、一見怖そうにも思われがちだ。 私もはるのことをはじめ怖い人なのかと思っていた。 三人で少しの間飲んでいると、宗ちゃんが戻ってきて、私たちは改めて“乾杯”と飲み始める。 よくある流れ。たいして普段と変わりのない夜だった。
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