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これまで社長の顔しか知らなかった三上さんのスマートな素の部分を見せられたような気がして、胸が少しどぎついた。
きっと、大人な余裕があるのだろう。
「へぇ……三上が?」
山谷さんは顎を擦り、三上さんを愉快げに見つめる。
三上さんは“何か文句あるのか?”というような怖い顔で山谷さんを見返すだけだ。
二人のバトルを見ているような気がして、視線を別の方に逸らす。
しかし、すごい場だと改めて感じる。
私はアウトドア派ではなく、インなので作家には詳しい方だ。
よく見ると大御所作家や近頃人気のある作家らがグラスを片手に談笑しているのが目に入ってくるから驚きだ。
失礼にならぬよう遠目に見渡していると、目の前にグラスが差し出された。
「苺味だって。今のなっちゃんのドレスにぴったりじゃない?」
山谷さんは笑顔で薦める。
淡いピンクのスパークリングのきいてそうなシャンパンは見ていて綺麗。
似合うと言われて悪い気はしない。
しかしアルコールには痛い目に遭っているため、固まった。
「なっちゃん?」
ここは立場上、受けとるべきだ。
そう思うのに、身体は動かない。
それなのに、私の前からグラスが消えた。
「藤下みたいなお子さまはジュースでじゅうぶんだ」
それは三上さんが代わりにとってくれたからだった。
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