61人が本棚に入れています
本棚に追加
「女が男嫌いになる理由はどんなものがあると思うか?」
それを原口に尋ねたのは、それからひと月ほど経ってからだった。
原口とは月1、2の頻度で飲みに行く仲である。
今夜も会社の側の居酒屋で二人で飲んでいた。
原口は俺と同じ大学に通っていたものの、途中で医師になると言い医学部へ編入し、今では総合病院の神経内科の医師として勤務している。
神経内科は心身症の類いは扱わない。
専門外だが、俺よりは詳しいのではないかと思ったのだ。
「誰のことを言っているのかな?」
原口は眼鏡を片手で上げ、俺の心の内を見透かしたように笑った。
「気になる子がいるんだ」
「へぇ、どこで知り合った子?」
「会社の事務の子」
「ふーん」
そう言って原口はタブレットを開き、“時代矢”を検索するから「彼女は載ってないぞ」とその手を止める。
原口は笑って「残念」と言った。
「男嫌いなんだよ、その子」
「へぇ、可愛いじゃん。ウブってやつだ」
「いや、そんな感じじゃない。彼氏いるしな。
だけどその彼氏にも心を開いてないような様子で、気になる」
ため息を吐きつつ、原口を見つめた。
答えが欲しい。
最初のコメントを投稿しよう!