君への確かな想い

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「女が男嫌いになる理由はどんなものがあると思うか?」 それを原口に尋ねたのは、それからひと月ほど経ってからだった。 原口とは月1、2の頻度で飲みに行く仲である。 今夜も会社の側の居酒屋で二人で飲んでいた。 原口は俺と同じ大学に通っていたものの、途中で医師になると言い医学部へ編入し、今では総合病院の神経内科の医師として勤務している。 神経内科は心身症の類いは扱わない。 専門外だが、俺よりは詳しいのではないかと思ったのだ。 「誰のことを言っているのかな?」 原口は眼鏡を片手で上げ、俺の心の内を見透かしたように笑った。 「気になる子がいるんだ」 「へぇ、どこで知り合った子?」 「会社の事務の子」 「ふーん」 そう言って原口はタブレットを開き、“時代矢”を検索するから「彼女は載ってないぞ」とその手を止める。 原口は笑って「残念」と言った。 「男嫌いなんだよ、その子」 「へぇ、可愛いじゃん。ウブってやつだ」 「いや、そんな感じじゃない。彼氏いるしな。 だけどその彼氏にも心を開いてないような様子で、気になる」 ため息を吐きつつ、原口を見つめた。 答えが欲しい。
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