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「なっちゃん、風邪ですか?」
朝礼でなつきのことを病欠と伝えたため、朝礼後に花尾が尋ねてきた。
まさか引っ越しのために休ませているとは言えない。
自分の家にいるなんて、さらに言えないことだった。
「あぁ」
「今の時期に珍しいですね。なっちゃん休むことなかったから心配ですね……」
「そうだな……」
「あとで連絡してみようかな……」
花尾が呟くので「病人なんだ、やめておけよ」と言った。
なつきが病気でないのを知っているために、つい大きな声が出た。
彼女はハッとしたように「そうですね、すみません」と言い、笑顔を浮かべ「仕事します」と離れていく。
「まさか“俺の家にいる”なんて言えないよね」
後ろから肩をポンと軽く叩かれた。
小さく囁かれる。
「……山谷」
俺は眉を寄せた。
本当のことを知っているのは山谷だけだ。
途中で抜けなければならないため、本当のことを伝える必要があった。
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