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瞳を開けると優しい顔をした三上さんがいた。
彼の手は私の頬に触れていて、ハッという様子で離れていく。
「私……」
「悪い、起こしたか?」
申し訳なさそうに顔を歪める彼に胸が締め付けられるのは、昨日から彼が私のことに真剣向き合ってくれているから。
「いえ、すみません……今何時ですか?」
腰を上げると、背に彼の手が添えられる。
振りほどこうとは思わなかった。
三上さんの高そうな腕時計を見せられる。
引っ越し業者が私の家に来るのは13時。まだ時間はあるものの、先に家で荷造りがしたいところだ。
「三上さん、私一度家に……」
「うん、行こうか。貴重品は纏めておいた方がいい」
私は簡単にメイクをし、三上さんに買ってもらった服を着て、彼の家を出た。
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