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「ここは私が変わるから行ってきたら?お茶出しはするから」
希子さんが山谷さんの書類に手をかけようとした。
野次馬丸出しである。
「こーらっ、希子ちゃんは自分の仕事あるでしょ」
山谷さんの正論に希子ちゃんは「……はーい」と手を引っ込める。
「ほら、仕事仕事」
山谷さんは希子さんの背を軽く押した。
彼女は「はーい」と残念そうな声を上げ、デスクに戻る。
「彼のことは三上に任せとけばいいよ。大丈夫。なっちゃん、コピーよろしくね」
山谷さんがウインクをする。
「……はい」
三上さんの友人でもあり、共同経営者のようなもの。きっと、色々察しているだろう。
彼は私に微笑むと、離れていった。
三上さんが部屋から出てきたのは12時を少し回った頃。
その時、私はコピー機の前にいた。
「大丈夫か?」
三上さんを見つめると、皆の視線を横から感じたが、コピー機の動く音で声は的確に届かない気がした。
「すみません……私のせいで、こんな……」
「いや、想定内。大丈夫だよ。
藤下、ちょっといいか?」
三上さんは私を出入り口扉の外に誘う。
声は届かなくても、皆の視線が気になるのでありがたい。
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