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はるの顔から笑顔が突然逃げる。
まるでよく晴れた空が一気に暗くなるように曇って、強い怒りが乗った。
頬に当たる手に力がこもり、内側に押し付けられる。
「……どういうこと?」
鋭い瞳から視線を逸らせない。
捕らわれたよう。
「……そのまま……だよ。私は、結婚できない」
「俺が急ぎすぎたから?それなら、ごめん。もっとゆっくり……」
「ううん、違うの」
「何が?」
はるの声がやや大きくなるけれど、今しかない。
「はるとは……別れたいの」
「……は?」
はるは鋭い瞳を大きくして、少しの間私を見つめた。
のり出した身体を正し、眉間を押さえる。
「私と、別れてください」
“何を言われる……?”
はるを見つめる。
喉がひどく乾くような感覚を覚えていた。
別れを切り出した。
ずっと、ずっと、胸に閉じ込めていたものだ。
……今、ようやく。
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