64人が本棚に入れています
本棚に追加
「ちょっ、やめろ……」
はるの言う通りに三上さんは手を離すと、次に私の腰を抱き留めた。
「なつき……」
はるは自分の手首を押さえ、私を見つめている。
その瞳は怒りと悲しみで溢れて見えた。
「はる、私、もう無理……」
「……なつき」
「私と別れて、お願い……」
嫌だと言われても、無理だと言われても、私の意思は固い。
もうはるに揺らぐことは決してないとわかる。
私のことを好きだった。
その気持ちは強く伝わっていたけれど、あんなひどい言い方はない。
売り言葉に買い言葉的なものだとしても許せない。
“私があの夜からどれだけ苦しい日々を送ってきたと思う?”
はるをバシバシと叩きたい。
だけど、同じくらい見たくない。
「悪かった。言いすぎたよ」
私は首を大きく大きく横に振った。
「もう、無理……」
「なつき……」
私は俯き、彼を視界から消す。
しばらくしんとした空気が流れた。
「ごめん、また話そう」
はるはそう言ったけれど、私は「さようなら」と返した。
はるは静かに出ていった。
最初のコメントを投稿しよう!