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ゆりに話したことで、私は三上さんが好きなのかもしれない、という思いに気付いたけれど、三上さんへの気持ちを確かにする勇気もない。
それに聞いたところでどうしてよいのかも、わからない。
そして、三上さんの様子はまったく変わらないので、私の心は穏やかを装い始めた。
そうしているうちに何も変わらない日常が三ヶ月ほど過ぎた。
季節は冬。
より好きな季節だ。
暑さを感じない最近では、はるのことを思い出すことは少ない。
しかし昨晩は久しぶりにはるの夢を見た。
あの暑い日の悪夢を。
必死で助けを呼ぶけれど、誰も助けてくれない怖い夢。
寝起き、私はびっしょりと汗をかいていて、冬だというのにひどく温い湯を浴びた。
それを隠し、三上さんの車で出勤していた。
「なぁ、藤下」
一番はじめの信号待ちで、三上さんが私を呼んだのだが、顔が固い。
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