すべてのはじまり

4/40
前へ
/40ページ
次へ
「まさか、なっちゃん、三上さんのとこにお泊まり?」 希子さんは自分で言いつつ、「なんて、ははっ」と笑った。 私は笑えない。 「藤下は家の隣に越してきたんだ。だからこれから毎朝、一緒に通勤するつもりだ」 笑っていた希子さんの顔が驚きに変わる。 たまたま会った。 そうごまかすと思っていたが、希子さんの通勤路は変わらないから、正直に言ったのだろう。 「……え、どういうことですか?」 「そのままだよ」 希子さんは少しの間、私たちに交互に視線を向けた。 「なるほど。なっちゃんと彼との新居が三上さんの隣だった……とか?」 私ははると上手くいっている。 誰もがそう思っていたはずだ。 ゆりでさえもそうだったのだから。 プロポーズをされたとついこの前話したばかりだ。 「いや、でもあの彼がいくら会社の社長とはいえ、他の男になっちゃんを送らせるか……?」 そして、たぶん誰もが気付くほどはるは嫉妬深い。 希子さんは自問し首を傾げる。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加