64人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
手が震える。
手を手で押さえ震えを止めようとすると、その上に三上さんの手が乗った。
「断るかかなり悩んだんだが……」
「……」
断るなんてとんでもないことだ。
首を横に大きく振る。
「うん、すまない。高橋さんの紹介でなければ、断っていた」
それはじゅうぶんにわかっている。
三上さんの選択は正しい。
「大丈夫です……」
はるにさえ会わなければ大丈夫だ。
はるの部署は営業だった。
きっと大丈夫だろう。
「打ち合わせなんかは、すべて先方でするつもりだから、心配するな。
一応報告しておきたかった」
事務である私に、決定されたばかりの機密事項は普通話さない。
三上さんの気遣いが伝わった。
「朝から、嫌な気分にさせてすまない」
「……いえ、教えてくださってありがとうございます」
はるの悪夢はまるでこのことを知らせていたのだろうか。
三上さんの手に力がこもる。
今はこの温もりにだけ、甘えたい。
最初のコメントを投稿しよう!