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ーーパシッ。
三上さんが山谷さんの手を跳ね避ける。思わず瞳を閉じた。
「……大丈夫ですか?」
その音は痛そうに感じた。
斜め前に座る咲良さんは何事だという感じに、こちらに視線を向けられる。
「大丈夫だよ」
だけど、山谷さんはへらっと笑うから、きっと大丈夫なのだろう。
「ごめんね、なっちゃん」
叩かれた場所を擦りながら、まだへらへらと笑っている。
「あ、いえ……」
首を横に振ると、「大丈夫か?」と、三上さんが心配そうな瞳を向けた。
「はい」
男嫌いな私を気にしてくれたのだろうとわかり、小さく口元を緩めるのだが、三上さんの眉間には皺が僅かに寄る。
笑い返してくれると思ったので不思議に感じ、首を傾げた時だった。
「すみません」
三上さんの後ろ、扉の方から声がした。
今日は来客の予定はないけれど、営業マンや宅配業者などの出入りはちょくちょくあるので、扉に視線を向けた。
「……え」
驚きで、心臓が止まるかと思った。
なぜならはると視線と視線がぶつかったからだ。
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