確かな恋心

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話を巻き戻さなくては……。 なんともない私を彼に見せなければ、と「えっとはるの話でしたよね……」と小さく笑った時だった。 「違うよ。そういうつもりで言ったんじゃない」と言って、抱き締められた。 「……三上さん?」 “フラれたのではないの……?” ひどく落ち込んだ気持ちが、優しく掬われたみたいに軽くなる。 “どんな顔をしているの……?” 密着する身体をどうにか押して、彼を見上げる。 しかしすぐ、後頭部を押さえられ、顔は胸に埋められ視界を遮られた。 「ごめん」 「……え」 またも言われた謝罪に胸が動揺してしまう。 “どっちなの……?” 「まさか、藤下に気持ちを伝えられるとは思ってもなかったから、嬉しすぎてちょっと動揺してしまった。 悪いが、このままでいさせてくれ」 正直意味がわからなかった。 嬉しいということはまだ、彼は私が好きだということでいいだろうか。 だけどなぜ、“ごめん”なのだろう。 私は普通の恋の始まりを知らない。 もしかすると、これが普通だったりして……。 しばらく胸をドキドキさせつつ、そんなことを思っていた。
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