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はるがにこやかなので、きっと希子さんは私とはるの別れ方が最悪なものだなんて思ってないに違いない。
そして私はあまり感情が顔に出ない方だと思う。
私ははると嫌々付き合っていたせいで、感情を押し殺すのが得意になってしまった。
よく観察しなければ、気がつかないはずだ。
「いいよいいよ、行っておいでよ」
希子さんは大好きな先輩だ。
だが今の彼女は恨めしく思う。
「希子さん、私……」
「私のこと気にしてるならいいよ?ほら、行っておいで」
ここであまりに動揺しては、はるとのことがバレてしまうかもしれない。
皆、ちらりちらりとこちらを気にしている。
ようやく穏やかな日常を取り戻しつつある今、それはとても困る。
「なつき、行こうか。好きなもの奢るよ」
でもはると二人きりになりたくない。
「き、希子さんも行きましょうよ」
私は希子さんの腕に自分のものを絡めて言った。
観察好きな彼女のこと。
断らないで……。
「え、いいのかしら?」
「はい!行きましょう」
はるの顔が一瞬曇ったのを私は見逃さなかった。
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