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はるとは数えられないくらいキスをしてきた。
それでもこんなときめきは、少しも覚えなかった。
もっとディープなものもたくさんしたのに……。
私にとってはるとのキスは恋人同士の演出のように感じていて、正直早く終わってくれないだろうか、とさえ思っていた。
欲望をぎらつかせて迫ってくるはるが、苦手だった。
はるは隠していたかもしれないけれど、私にはしっかり伝わっていた。
それなのに、三上さんとのキスは真逆だ。
スマートで、優しい。
「大丈夫か?」
三上さんが私を覗く。
キスとは一方的なものではないのだと知る。
三上さんの揺れた瞳が印象的で、私はきっと、彼のこの顔を忘れることはないだろうと感じながら、頷く。
「……はい。ただ……」
「ただ……?」
「胸がいっぱいです」
「……そう」
この顔も、だ。
安堵混じりの優しい表情も忘れないに違いない。
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