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ーー早く来て。
心臓はバクバクだ。
レジのすぐ横で店の外を見つめながら、胸を押さえる。
けれど、なかなか来ない。
まだはるも店から出ていない状況だ。
来たらすぐにタクシーに乗り込もう。
それからマンションに逃げ込めばいい。
そればかり考え、手に力を込める。
「タクシー遅いですね」
少しビクッとした。
男の声だったからだ。
それははるのものではなく、先ほど私から声をかけた店員のもの。
カウンター越しに話しかけられた。
「あ、はい……」
「もしよろしければ中で待ちませんか?」
「……え」
店員はレジから繋がる奥の方を手で指した。
「何か事情があるように見えるんで」
彼は私の耳近くで小声で言うと、私を追い越し後ろに視線を一度向けた。
はるを見つめているのだろうとわかる。
「……あ」
「裏口から外にも出れますよ」
彼はやや長い茶髪にピアスを付けた今どきの若い男だ。
大学生だろうか……。
一歩足を後退させてしまう。
男の中でも大学生くらいの年齢が一番苦手だ。
それもはるのせいだ。
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