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どうすればいいか、少し考えていると、はるがこちらに近づいてくる気配を感じた。
「な、中で待たせてください……!」
はるの方が今の私には危険だ。
勇気を持って前に足を踏み出す。
「こっちから入れます」
店員はカウンターと売り場を仕切る扉を開け、誘った。
怖かった。
けれど、はるに言いたいことを言え、離れられた今の私なら大丈夫だと言い聞かせて、店員に続き店の奥へ進む。
「あれ、どうしたの?」
小さなスタッフルームにいたのは年配の女性で、私を不思議そうに見つめた。
ーー大丈夫だった。
「店長、すみません。タクシー待ちのお客さんなんですが、ここで待たせてもいいですか?」
「……え?なんで?」
「なんか、事情があるっぽいんで」
二人の視線が私に集中する。
けれど私は女性が前にいる安堵感に泣けてきて、説明ができない。
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