ファーストキスの味-2

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「いいわ。あなたは仕事に戻って」 「はい。タクシー来たら教えますね」 「ありがとうございます……」 男性店員は私に小さく頭を下げると、レジへと戻っていった。 「座られます?」 「あ、す、すみません……」 「こちらにどうぞ」 「失礼します……」 いかにも訳ありな私なのに、彼女は椅子を出してくれた。 せっかく薦められたので、ゆっくりと腰かける。 「大丈夫?」 「あ、はい。すみません」 「駆け込んで来るお客さまはあなただけじゃないから、安心してね」 「……え」 「若い女性もだけど子供も駆け込んで来るのよ。 あなたみたいな綺麗な子は大変ね。私はこんなに太ってるから怖いものなんてないけど」 彼女は自分の腹部を叩いて見せる。 たしかにふくよかではあるが、こういう時どう返していいのかわからない。 ただ気を遣ってくれているのはわかるので、小さく頭を下げた。 するとそこに「お客さん、タクシー来ましたよ」と先ほどの店員が戻ってきた。 「あ、すみません……」 「ここから出られますよ」 店員は外に繋がる扉を開けてくれた。 それから次に私の肩に触れ、外へ誘う。 瞬時ビクッとしたが、親切な行為だ。 グッと息を飲み、二人に何度も礼をし、店員と外に出た。
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